「旬の話、食材の話|福岡、西中洲の和食、日本料理 ゆるり」


この写真、違和感ありませんか?

なんで鰻に桜花蓮根?夏のものに春のあしらえ?おかしくない?

おかしくない、おかしくないのですよ!!!

天然鰻は冬が旬ですから。なので春待ちの蓮根を添えています。

夏は「イベントとしての旬」といいますか、風習ですね。恵方巻きのようなものです。そういった意味では「鰻の旬は夏」も正解です。

旬と一言でいっても中々難しいものです。

美味しいとき=旬  でもありますし、

漁獲、収穫が多く、値段が安いとき=旬  も間違いではありません。

また、鰻のように「イベント的な旬」もありますし、最近では主要な野菜などは「時知らず」とでも言いましょうか、通年安定した量、価格(多少の値動きはありますが)で流通しています。また、魚も養殖の物は概ね価格も安定して通年出回っています。冷凍技術もかなり発達していますので、秋刀魚などを春先などにスーパーで見かける事もたまにあります。

個人的には便利ではありますが、私のような業界のものでも日本ならではの旬は感じにくくなったとも感じます。食も多様化してますし、「旬」といったものの重要性は昔に比べて優先順位は低くなったとも思います。

先ほどの、

美味しいとき=旬  漁獲、収穫が多く、値段が安いとき=旬

という観点では、一昔前は「漁獲、収穫が多く、値段が安いとき=旬」であり、現在では「美味しいとき=旬」+「イベント=旬」が最もわかり易い「旬」になったのかもしれません。

ゆるりでは「美味しい=旬」の比率を重視しています。仕入れに行って「美味しそう」と思ったものを料理することにしています。季節の旬は勿論大切にしていますが、その中でできればもっとも美味しいものを、と考えています。

筍や蟹、鮎、松茸などわかり易い旬もありますし、なんとなく知っていれば十分と思います。あとは板前さんにおまかせで「美味しいもの」を楽しんで貰えれば知らなかった旬にも出会えることでしょう。

最近は天然物でも「旬」らしい「旬」のものを見つけることが難しくなってきました。それでも「旬」といった概念や「旬の楽しみ」は今後も残っていってもらいたいと思います。「食べたいときが旬」も良いですが、日本らしい「旬」のあり方はすばらしい食文化だと自分は確信しています。