「生姜の話|福岡、西中洲の和食、日本料理 ゆるり」


生姜の料理と言ってもそうそう思いつくものではありません。どちらかというとお刺身の薬味やお寿司のガリ、煮付けなどの風味つけや臭みを抑えるなど脇役のイメージです。後は生姜湯やジンジャーエールといった飲み物くらいでしょうか。生姜独特の香りと風味を活かした使い方です。

今回は生姜をメインにした料理、生姜を味わう料理です。
「粉吹生姜」は焼物の添え物やお茶うけ、八寸や前菜に使われるお料理です。似たようなものでは「鼈甲生姜」というものもあります。どちらも新生姜の風味を活かしながら蜜で炊いていく仕事です。作り方は生姜を茹でてさらし、蜜で炊くという、字面的にはかなり簡単な仕事です。鼈甲生姜はそうでもないですが、粉吹生姜は案外「勝負勘」が問われる仕事です。
生姜を茹でてさらし生姜独特の辛味を抜きますが、全く生姜の風味が無くなってしまうと意味がありません。爽やかさは残したい。それでも2日位かけて辛味を抜きます。どの程度抜けたかは食べて確認します。「2日さらしたから大丈夫」などという理屈は通用しません。相手は物言わない生き物で、皆個性というかクセがあります。それを見極める必要があります。この後蜜で炊く前に水分を飛ばすため強火で蒸し上げるのですがその工程でも風味は飛ぶので計算に入れておかなければなりません。
蜜で炊いていきます。何グラムで何CCの蜜といった割りはありません。鼈甲生姜の場合はある程度に詰めて濃口で色を付ければ良いので失敗はあまりありません。粉吹の場合は蜜が無くなるまで詰めていくので炊き始めの蜜の量が多すぎると綺麗に上がりません。ここも「勝負勘」が問われます。ちょっと少ないかなくらいでいい感じです。火加減も最後の方はかなり気を使います。弱すぎると生姜が蜜を上手く吸ってくれませんし、強すぎると色(カラメルの原理)がつきます。慎重かつ大胆にやっていきます。最後に酢を加えますがここもタイミング、量など失敗は許されません。水分をかなり飛ばすので生の状態の半分以下の大きさになります。ということは包丁する時点でそこも計算しておかなければならないということです。炊き上がったら広げて冷まします。すると粉を吹いたようになり、完成です。リアルな生姜飴って感じです。甘いものが苦手な方でも一つ二つなら美味しく召し上がっていただけると思います。似たような物は違う方法でも作れるので機会があれば作ります。時間が多少かかりますが。手間暇かかる割には地味です、かなり地味です。
やっぱり脇役ですが、存在感はあります。そんな脇役料理も大切なゆるりの大切な料理の一つです。

追伸:かなり日持ちはしますが、大量には仕込みません。自分、飽きっぽいので。

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