「おせち 春のお重|福岡、西中洲の和食、日本料理 ゆるり」


さて昨日に続いてお節のお話です。
ゆるりのお節は祝肴と春、夏のお重、秋、冬のお重といった構成です。今回は春のお重です。

春のお重

春筍土佐煮
宮崎産の早採り筍の土を洗い流し、糠、鷹の爪をいれて茹でます。柔らかくなったら一昼夜そのままにしておき次の日に糠を洗い流し、糠臭さを取るために再度ゆでます。一番出汁とさし鰹をしてじっくり炊きます。生はやっぱり風味が違いますね。

鶉鍬焼
うずらのもも肉を柔らかくなるまで酒、水で炊いていき、一度鍋のまま冷まします。灰汁や余分な脂を取ってから濃口、砂糖などで味をつけます。味が馴染んだところを天火で色が付くまで焼いていきます。山椒を振っても良かったのですが、ちびっ子が食べにくいと思いやめました。

桜白魚道明寺錦糸巻桜花の風味
刺身用の白魚を束ねて酒蒸しにします。それを巻き芯にし、塩抜きした桜花とともに桜色の道明寺で巻いていきます。さらに錦糸卵で巻いて切り分けます。道明寺は冷めると固くなるので柔らかめに戻しましょう。

鰆西京焼
鰆は切り分けて塩をします。西京味噌で作った味噌床に2日ほど漬けてから味のノリを確認し、焼いて行きます。こげやすいので注意が必要です。

蛤遠山焼
蛤を酒蒸しにして片方の殻をはずします。じゃが芋を蒸して裏漉しし、マヨネーズ、すり身をよく混ぜ、青寄という葉物野菜から取り出した色素を加え緑色にします。蛤の殻に塗り込みラップで形を整えます。焼いて火が通れば出来上がりです。

細魚昆布〆
春の魚である細魚ですが、通年水揚げはあります。
刺身用の物を三枚に卸し、薄く塩を振った後に浅く酢で締めます。細魚と昆布を交互に重ねて軽く押しを掛けます。昆布が細魚の水分を吸って、風味が移れば食べ頃です。

ふかひれ煮凝り
本来なら「独活(うど)の桜煮」を入れる予定でしたが、今年は暖冬で春野菜が手に入りませんでした。で、何となくふかひれ煮凝りを作ってしまいました・・・。小さめの姿ふかひれ(捌いてない奴です)を一番出汁で蒸煮込みにした後、針生姜とともに煮凝りにしています。

春子南蛮漬
小鯛の南蛮漬けです。焼き南蛮の方が美しくは見えますが、揚げ南蛮の方が美味いので揚げてます。鱗、えら、内臓をとってから粉を打って揚げます。小さいから鱗取らなくてもよくねー?とか思ってはいけません。取るべきです。お店で使うときは登り串を打ってから揚げますが、今回はお重に詰める事を考えてそのまま真っ直ぐにしています。

蕗と蕗薹伽羅煮
蕗は塩をまぶして板摺してから茹でて皮をむきます。長さを揃えてカットしてから濃口で佃煮風に炊いていきます。蕗の薹は一度ボイルしてから2,3日さらして灰汁を抜きます。その後風味が抜けないようにサクッと炊いてしまいます。地味に美味しいです。

紅梅赤紫蘇甘露
国産の梅干しを番茶で炊いてからさらして酸味と塩味をとことん抜きます。薄めの蜜で炊き始め、少しづつ砂糖を加え味を含ませていきます。最初から濃い蜜で炊くと梅がしわしわになってしまいます。最後に酢と赤紫蘇のシロップを入れて仕上げます。

花びら百合根
形の揃った市販品もありますが、ここも手作りで。百合根を捌いて面取りをし、切込みを入れて花びらの形にします。大きさはまちまちですが、その方が味と言うか風情があって盛り込んだ時に綺麗です。
薄く紅で色を付けて桜の花びらに見立てています。

花菜昆布〆
菜の花は銅板を入れた湯で固めに茹でて薄めのお浸し程度の味を付けます。味がのったら出汁を切って布巾で水気を取ってから昆布で挟みます。色が悪くなると台無しなので注意が必要です。

鉤蕨
これまた生が無かったのでビン詰めの水煮を使いました。無理して入れる必要は無かったのですが彩、雰囲気考えればやはりあった方が良かったです。春らしくなりました(笑)。一度茹でてからお吸い物くらいの淡い味付けで炊いています。

最後に梅枝を飾って完成です。書いてると結構うんざりしてきます。読んでる方も結構うんざりだと思います。が、あと夏、秋、冬のお重が残っています。お暇な方はお付き合いの程よろしくお願いします。

追伸:年明け早々に「来年もお願いします!」と言うお電話をいただきました。ありがとうございます。板前冥利に尽きます。何とも言えず嬉しい瞬間でした。

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西中洲の和食「ゆるり」
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