「おせち 夏のお重|福岡、西中洲の和食、日本料理 ゆるり」


おせち夏のお重です。

鰻有馬煮
国産の鰻をじっくり炊いていきます。炊きあがりはかなりの柔らかさ、箸で持つのが危険なレベルです。冷めた時にベストな固さになるようにしておかないと食べる時にゴムみたいになってしまいます。今回は山椒を入れて有馬煮に。酒、飯問わず相性が良いです。

車海老芝煮
仕入れの都合で熨斗(のしと読みます、真っすぐにしたもの)と有頭のつの字バージョンに分かれてしまいました。写真は熨斗バージョンです。ここは意地でも「車海老」です。ブラックタイガーやその他の海外産も悪くはないですが、色、味ともにやはり車海老が一歩上を行きます。酒を利かせてサクッと炊きます。炊きすぎは固くなって美味しくありませんし、温度が高すぎても美味しく仕上がりません。海老炊くだけですが地味に神経使う仕事です。

唐津地多幸柔煮
献立上「多幸」となっていますが、「蛸」です。まずはぬめりを取るために揉むのですが、炊きものに使う場合は自分は「塩」ではなく「糠」で揉みます。余分な塩気をつけたくないのと、糠揉みの方が炊きあがりが綺麗に仕上がります。糠を洗い流して軽くさらして糠臭さを落としてから蒸煮込みにします。色、形を美しく仕上げたいので低温でじっくりです。温度が高かったり、無駄に長時間蒸し過ぎると柔らかくはなりますが皮が破れてみっともないと自分は思うのでタイミングを見て潔く火を止めてすぐに冷まします。味を馴染ませるためそのまま一日は冷蔵庫で冷やします。

合鴨ロース
合鴨は縮みすぎないように皮目に切り目を入れてからフライパンで焼き余計な脂を落とします。更に熱湯にくぐらせて脂を徹底的に落とします。濃口ベースの出汁を作って鴨を炊いていきます。75℃に温度を調節し、15~20分ほど様子を見ながら火をいれ火が通ったところで打ち上げて冷蔵庫に吊るして余計な血を抜きます。出汁は冷やして固まった脂、灰汁などを綺麗に濾し取ります。鴨を出汁に漬け込み味を含ませます。当初は更に手を加える予定でしたが案外美味しくなかったので別にソースをそえることに。というわけで和風のオレンジソースを今回は作りました。

鱸酒盗笹蒸
すずきは三枚に卸し塩を振っておきます。塩を洗い流して小さめの切り身にします。酒盗を酒で沸かして酒盗地を作り、薄口、味醂で味を調え切り身を漬け込みます。四角いバットに厚さが均一になるように重ねて蒸し器で蒸します。冷ました後、大きさを決めて切り分け笹で巻き再度軽く蒸します。笹の風味がほんのり移れば完成です。因みに少し足りなかったので矢柄四つ編み酒盗蒸しのバージョンがあります。なんかすみません。

煮穴子チーズ寄せ
小さめの穴子を腹開きにして煮穴子を作ります。プロセスチーズ、カマンベールチーズに酒を振って柔らかくなるまで加熱します。軽く冷ましてから卵黄、生クリームを混ぜ塩、砂糖で味を付けます。煮穴子でチーズ生地を包み、円柱状にして蒸しあげます。山葵を混ぜるつもりでしたがちみっこが食べられないのでこれまたやめました。

お多福雲丹落雁
空豆を茹でて皮を剥き、裏漉しします。大和芋蒸して裏漉し、空豆の裏漉しとあわせて鍋で練り上げます。ある程度水分が飛んだところで湯煎にかけさらに練りながら水気を飛ばします。塩、砂糖、薄口で味付けし、蒸雲丹を加えさらに練ります。冷ましてから型押しで成形し片面を練雲丹と卵黄で作った物で黄金焼にします。何度か重ね塗りしてムラなく黄金色になったら焼き上がりです。

芥子花蓮根
蓮根は細めの物を選んで花に剥いていきます。色が悪くならないように酢水に付けておきます。茹卵の黄身、西京味噌、和辛子をあわせ芥子味噌を作ります。蓮根を立てて水気を切ってから穴に打粉をして味噌を詰めていきます。ラップで味噌が出ないようにきつめに包み蒸しあげます。衣付けて揚げるのが一般的ですがお弁当の類に揚げ物を入れたくないので蒸して火を入れています。

花茗荷酢取
何の変哲ない酢取り茗荷です。この時期に手に入る数少ない夏野菜です。

無花果紅甲州煮
乾燥無花果に赤ワインを注ぎひたすら蒸します。甘みは無花果からでるので砂糖はあまり入れていません。味を引き締めるのにレモン汁を少々。後は無花果任せの一品です。

蒸鮑柔煮
以前は殻盛出来るサイズ(70g無いくらいだったと思う)の物を選んでましたが、「いやいや、殻いらんやろう。鮑はデカい方が美味い」ということで今年から殻無、身だけにしました。一個400g位の大物を買って、生きたまま酒、大根で軟らかく炊いてから味付けし結構厚めに切って入れてます。柔らかく深い味わいです。やっぱり鮑はデカい活物が良いです。文句の着けようが無い、とても良い鮑でした。魚屋さんに感謝です。

最後に小笹を飾りましょう。夏らしい豪快なお重が仕上がりました。明日は秋のお重です。バカ丸出しですね。お節ではないのでは?と言う方もいらっしゃると思いますがそれはそれで(笑)。

追伸:今年は「甥っ子専用お節」も作りましたが写真がありません。伊勢海老一本、毛ガニ一杯、かなり大きな海老(伊勢海老よりもデカい、多分400gくらい)一本、タラバガニ脚の良いとこだけ、肉、野菜ちょっと、で、蓋が閉まらないというお決まりのパターンでした。まぁ、正月ですから。思い出作りの一環です。

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西中洲の和食「ゆるり」
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